なぜ未成工事支出金(仕掛かり中の工事)は「取引のお金」ではなく「回すお金」(ブロックIV)に入るのですか?

カテゴリ: ブロックの意味

未成工事支出金は決算書では流動資産ですが、スタークボードでは棚卸資産の仲間としてブロックIV「回すお金」の運用側に置きます(2026-09-13 まではブロックIIでした)。

理由: 在庫は「何で賄っているか」で見るから

ブロックIVは 短期借入金 − 棚卸資産 です。銀行が短期の運転資金として貸すお金の、まっとうな使い道は在庫(仕掛かり)です。だから在庫と短期借入を同じブロックで対にします。

  • IVがプラス = 短期借入が在庫を超えて、赤字の穴埋めや設備に流れている
  • IVがゼロ近く = 在庫を短期借入で回している(小売など回転の速い業種の健全な形)
  • IVが大きなマイナス = 在庫を自前のお金(利益・長期資金)で持っている=「寝ているお金」はここに見えます

以前は「引き渡すまで動かせない寝ているお金だから長期(ブロックII)」としていましたが、それは在庫の状態(遅いか速いか)の話で、在庫という役割の話ではありません。在庫が数週間で回る業種をIIに置くと、固定資産に投資しすぎた会社に見えてしまいます。土地は翌月売る予定でもIIであるのと同じで、在庫は遅くても速くても同じ場所に置き、滞留しているかどうかはコンパスの「在庫型」判定で別に見ます。

建設業のスタークボードが教えてくれること

工期の長い建設業では、未成工事支出金が大きく膨らみ、ブロックIVのマイナスが深く見える(短期借入が無ければそのまま)ことがあります。これは表示の問題ではなく実態です——自分のお金や長期の資金が工事の仕掛かりに寝ている、という事実を映しています。

このとき必ずセットで見てほしいのが未成工事受入金(ブロックIIIの調達側)です。

  • 受入金が厚い=お客様のお金で工事を進められている(健全な資金設計)
  • 受入金が薄い=自分のお金(または借入)で工事を立て替えている(1本の大型案件で資金繰りが締まる構造)

利益と現金がズレる業種の代表格

建設業は「利益は出ているのにお金がない」が起きやすい業種です。売上の計上タイミング(完成基準・進行基準)と現金の動きは原理的に独立で、実際の資金繰りを支配するのは回収と支払いの差——つまり未成工事支出金・完成工事未収入金・未成工事受入金の増減です。

損益計算書の利益は「意見」、貸借対照表の現金は「事実」。スタークボードがBSから資金構造を読むのは、まさにこのズレが大きい業種で効果を発揮します。